ハイレベルのスタンダード それがACE60コイルだ
JB64/74はフロントエンジンミッドシップと言える重量バランス
車両特性はJB23と大幅に異なるのでサスペンション開発は苦労した…
想像以上に苦労したサスペンション
- talk: オフロードサービース タニグチ代表 谷口 武氏
- Photo&Text: Kazuhiro NASU
コイルはソルブACE20、40、60と3種類をラインナップするオフロードサービス タニグチ。今回はソルブACE60の話を伺った。
谷口氏曰く「ソルブACEと銘打ったJB64、JB74用のサスペンションシリーズの中でもACE60はフラッグシップ的な位置付けで、最もオフロードの走破性を高めたモデルです。このサスペンションは作り上げるのに最も苦労したモデルなんです」。
それはどんな苦労をされたのですか? タニグチさんは、もともとJB23用サスペンションをラインナップとして持っているのだから、そんなに苦労するとは思えないんですけど。
「はい。僕も最初はそこまで苦労せずにできるかな?と思っていました。しかし実際に取り掛かってみたら、JB23とは全く違うことに気がついたんです。基本的なレイアウトこそ同一なんですけど、軸重が全く違う。重量配分で言うと、54:46で、フロントエンジンミッドシップなんです。この時点で、嫌な予感がしました。実際にJB23用のサスペンションを装着してみたら、フロントが固く感じてリアが弱い。そこから、何度か試作を繰り返してバランスだけはどうにか出来たんですけど、実際に走らせると、別の問題が浮き彫りになったんです。それはフロントトラクションが悪いこと。ステアケースなどで、リアにかかる負担がJB23と比較してかなり大きく、乗り心地と両立るのはかなり難しい…と言うことがわかったんです。これらは全てフロントエンジンミッドシップの弊害で、フロントアクスルに車重がかからないため、切り上がるようなシチュエーションでグリップしてくれない。さらに重心位置が車体中心に近いため、ステアケースで全ての重量がリアに集中してしまう。中間域のバネ定数が普通の作りでは足らなくて、腰のない動きになってしまう。この二つの問題をなかなかクリアできなかったんです。最終的に、中央発條のLOBという特殊製法をリアに使い、フロントにはノーマルのバネ定数を参考にしてを製作。1G状態か何センチストロークした時点でバネ定数を上がるように設定すれば良いのかを実走データをもとに試作し、テストを繰り返しようやく完成に漕ぎ着けたんです。さらに、ダンパーに関しては、ルーフ面積の大きさから、重心位置が高く、ロールだけでなく、ヨーの発生を規制しないと、走行性能と乗り心地が両立できない。単純に圧側減衰力を上げてロールとヨーを抑えようとすると、乗り心地が最悪になってしまう。戻り減衰力をかなり高く設定する必要がある。カヤバに何度も製作依頼をし、減衰力14段のなかにベストの設定を入れることに成功。この設定は、カヤバでもかなり限界付近の設定らしく、他社製と比較してもかなり良いものになった。これらのテストがかなり時間がかかり、発売が遅くなってしまったんです」と谷口氏。実際に筆者が乗った印象も、オフでのフロントトラクションが強く、リヤのコシもいい感じ。オンロードでのバランスも良く、高いレベルでマルチに使える印象。
「そう言っていただけると苦労した甲斐があります。ソルブACEの20と40は、60を基本とし、性格を変えた派生モデルです。基本的な考え方は、60と同一。タニグチとして大柄なボディのJB64は60ミリ以上のリフトアップは必要ないと言う見解です。ハイレベルスタンダードそれがウチです」。
タニグチがラインナップしているサスペンションキット。この3タイプは単純なリフト量の違いだけではなく、全く違う足回りとなっているのが特徴。20は最もリーズナブルだがビギナー向けではなく、20ならではの味付けが楽しめるのだ。
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