リチウムイオンバッテリーと走行充電器は相性が悪く、なかなか充電しない?
サブバッテリーの代表的な充電方式は走行充電器での充電が手軽でリーズナブルだが、リチウムイオンバッテリーは充電に時間がかかるとの噂が!?
リチウムイオンバッテリーは走行充電器で時間がかかる!?
生徒 先生、キャンピングカー仲間の友達がエアコンを長く使えるようにって、サブバッテリーをリチウムイオンに換えたんだけど、満充電までの時間が鉛バッテリ ーの時よりかかるって言うんだけど。
koniken先生 充電器は何を使ってるんだい?
生徒 シーテックだよ。
koniken先生 まさか昇圧充電してないよね?
生徒 前のはACデルコだったから、昇圧充電してたらしいけど、今のはリチウムイオンバッテリー専用のに換えてるって。
koniken先生 それでも充電に時間がかかるんだ。まぁ、最近同じような相談が増えてるけど、多くのケースは電気の使いすぎだったりするんだよ。
生徒 確かに、その友達は前より電子レンジ使ったり、車中泊中もエアコン使ってるらしいけど、それにしても走行充電に時間がかかるって。
koniken先生 さらに今年の夏は猛暑続きで、走行中もエアコンを酷使してるだろ。
生徒 そんなのも走行充電に影響するんですか?
koniken先生 影響が大きいんだよ。クルマ本体のエアコンを使うと、ディストリビューターで発電した電気はエアコンを動かすために使われてしまうんだ。走行充電器は、基本的にメインバッ テリーが満充電になった時の余剰電力を貰い受けるシステムになってるから、余剰電力が少ないと充電能力が低くなってしまうんだ。
生徒 そうなるとサブバッテリーに供給される電気が少なくなるんだ。
koniken先生 その通りだよ。猛暑が続くとメインバッテリーも酷使されて寿命が短くなるし。
生徒 でも、友達が家の駐車場でエアコンもライトも点けずにサブバッテリーを充電しても、鉛バッテリーより充電しないって言ってた。
koniken先生 以前のサブバッテリーはACデルコだったよね。合計容量は?
生徒 ボイジャーのM27をツインで積んでた。
koniken先生 そうなると合計で210Ahか。それで、付け替えたリチウムイオンバッテリーの容量は?
生徒 やっぱり100Ahを2個。
koniken先生 容量は同じなんだ。それで充電時間が長いのか。こりゃ一度、実験してみる価値があるな。じゃあ来週実験してみるか。
3時間でリチウムは64%だが鉛バッテリーはほぼ95%充電
koniken先生 それでは、いよいよ充電時間の比較だ。走行充電器はシーテックのD250SEとSMARTPASS120Sの組み合わせにした。
生徒 バッテリーごとに最適なモードがある新製品ですね。
koniken先生 こりゃ最適な実験になるね。まずはボイジャーからだ。80A以上の発電能力があるハイエースからシーテックを介して充電する。
生徒 友達のはツインで6時間でほぼ満充電になるって。
koniken先生 だろうね。ではスタートだ。キミは電圧を測定。私は電流を見る。
生徒 ハイ。スタート時点で電圧は13・07Vです。
koniken先生 電流の方は51・3Aと大きいな。この調子だと3時間程でほぼ満充電だな。
ー30分経過ー
生徒 13・33Vに増加しました。
koniken先生 電流の方は44・73Aに低下したよ。
ー3時間経過ー
生徒 14・36Vです。
koniken先生 こっちは15・07Aに低下。こりゃそろそろパルクチャージの最後だな。
ー4時間経過ー
生徒 14・43Vに上がりましたけど、3時間半から上がり方が鈍いんです。
koniken先生 だろうね。電流3時間半から一桁台に入ったから、大電流で容量80%までの充電を行うパルクチャージを終えて吸収・浸透充電になったんだ。ほぼ満充電になったな。
生徒 でも充電し続けてますよ。
koniken先生 シーテックはこのまま充電し続けるんだ。次はリチウムをスタートだ。
生徒 ハイ。エッ、シーテックが止まった!?また動いた!
koniken先生 何回リスタ ートするかな。
生徒 3回止まって動いた。
koniken先生 入力が80A以上だと適正流量にするんだ。
ー3時間経過ー
生徒 ずっと13V前半でやっと13・51Vになりました。
koniken先生 こちらは37・5Aから始まって18A台になった。スマホで充電量を見ると64%だから、鉛より充電量は少ないな。
ー4時間半で容量91%。5時間28分で100%。充電器停止ー
生徒 こんなに時間がかかる。
koniken先生 3時間で鉛は推定充電率は95%だからね。
生徒 リチウムは3時間充電で充電容量が64%だと充電不安ですよね。
鉛バッテリー(ACデルコ M27MF/105Ah)と、ほぼ同容量のリチウムイオンバッ テリー(SOK/100Ah)での充電時間を、走行充電器シーテックを使って比較。
●走行充電性能実験 車両:ハイエース
実験日:9月11日
バッテリー:鉛蓄バッテリー(ACデルコ M27MF/105Ah)
スタート時バッテリー電圧:11.46V
0H | 0.5H | 1H | 1.5H | 2H | 3H | 3.5H | 4H | 5H | 6H | 7H | 8H | 9H | 9.5H | |
電流【A】 | 51.3A | 44.73A | 32.91A | 21.34A | 16.84A | 15.07A | 8.1A | 5.04A | 2.49A | 1.78A | 1.4A | 1.18A | 1.05A | 0.99A |
電圧【V】 | 13.07V | 13.33V | 13.45V | 13.55V | 13.86V | 14.36V | 14.41V | 14.43V | 14.50V | 14.54V | 14.55V | 14.58V | 14.59V | 14.59V |
※充電器が停止しないため、9時間30分で実験終了
実験日:9月12日
バッテリー:リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(SOK/100Ah)
スタート時バッテリー電圧:11.28V
0H | 0.5H | 1H | 1.5H | 2H | 3H | 3.5H | 4H | 4.5H | 5H | 5時間28分充電器停止 | |
容量【SOC】 | 0% | 14% | 29% | 38% | 47% | 64% | 74% | 83% | 91% | 100% | 100% |
電流【A】 | 37.5A | 35A | 23A | 17.71A | 17.62A | 18.38A | 17.92A | 17.6A | 17.67A | 17.48A | 0.1A |
電圧【V】 | 13.33V | 13.47V | 13.45V | 13.45V | 13.51V | 13.58V | 13.6V | 13.62V | 13.62V | 14.24V |
※BMSをスマホのブルートゥースで確認した数値(BMSとはバッテリーマネジメントシステムの略)
備考:リチウムイオンバッテリーではエンジンスタート時に電流が80A以上流れたが、バッテリー1台の最大入力電流が80Aのため、システムが停止してしまう状態を3回繰り返してから充電が始まった。
キャンピングカーで使用されるリチウムイオンバッテリーの最大入力電流は80A程度のものが多いので、2台並列に繋げば160Aまで対応できる。
※実験結果は実験環境により変わります。